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災害から学ぶ

〜災害における企業の法的義務(安全配慮義務)〜

はじめに

労働契約法第5条は「使用者は,労働契約に伴い,労働者がその生命,身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう,必要な配慮をするものとする。」とし,企業には従業員の生命,身体,財産の安全を図らなければならない義務があることを定めています(この義務を「安全配慮義務」といいます。)。

また,学校や介護施設等の生徒や被介護者を管理している施設はその従業員(職員)のみならず生徒や被介護者等の生命,身体の安全をも図るべき義務を負います。

このことから,企業等の「不注意」によりその管理下にある従業員等が死亡,負傷等をした場合,企業等は従業員等やその遺族に対して安全配慮義務違反に基づく損害賠償義務を負い,現に極めて数多くの安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求裁判が存在します。

この企業等の従業員等に対する安全配慮義務には,地震等の災害発生時にこの災害から生じる危険から従業員等の生命,身体等を守るべき義務も当然に含まれています。

具体的には,企業等には,①災害が発生した場合に,従業員等が死亡しあるいは負傷することが通常あり得る個々の危険を予測する義務(予見義務)があり,その上で,②その危険の発生を通常であれば防止できるだけの措置を取る義務(結果回避義務)があります。

例えば,従業員が老朽化した建物や多数の物品・什器が煩雑に置かれている建物で就労している場合,大きな地震が発生すれば建物の倒壊や物品の落下・什器の転倒等により死亡しあるいは負傷する危険があることは通常・合理的に予測できますので,その危険を予測する義務(予見義務)があります。

そして,その予測を前提に,その危険(建物の倒壊等により従業員が死亡し負傷する危険)が発生することを通常防止できるだけの措置(建物の補強工事や物品の落下防止措置・什器の転倒防止措置等)を取る義務(結果回避義務)があります。

以下,大震災の発生により従業員等が死亡した事案に関する裁判例をもとに,災害に関する安全配慮義務を考察していきます。

東日本大震災での裁判例

七十七銀行女川支店津波被災事件

日和幼稚園バス津波被災事件

ポイント

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